『ロスジェネの逆襲』で第3弾となる「半沢直樹」シリーズ。


池井戸潤
週間ダイヤモンドで「銀翼のイカロス」を連載してる時にkindleで読んだんだけど、heartを鷲づかみされてσ(^^)の中では最高傑作、下町ロケットの温め直しって感じもしない事もないけど(^^;

この人たぶん書くの早いんじゃないかな?ズバズバ来る感じ

 

あらすじ、その他、検索すれば いくらでも たこでも

 

 


 私立の中高一貫校だったせいもあり、 同じ学校の友達には、父親が株で大儲けしたとか、ボーナスでベンツを買ったとか、そんな話があふれていた。

 

 ところが、中学から高校に上がった一年生の秋、異変が起きた。

 

 ヨースケだけでなく、高校二年に上がるまでに、何人ものクラスメートが親の都合で学校を去ったことは、忘れ得ぬ出来事として森山の心に刻み込まれた。生徒の間にあふれていた、ある種能天気で、景気の良い話はとんときかれなくなり、世の中全体が長患いの家族でも抱えているかのように暗く、沈んでいく。

 

バブルとバブル崩壊、ロスト・ジャネレーション

 

就職氷河期の真っ只中に就職活動をすることを強いられた森山は、数十社にもおよぶ面接を受けて、落ちた。

 

 身を削るような就職活動をくぐり抜けて会社に入ってみると、そこには、大した能力もないくせに、ただ売り手市場だというだけで大量採用された危機感なき社員たちが、中間管理職となって幅をきかせていたのだ。

 


「いいスキームはできそうか」そうきいた半沢に、
「気合いでつくりますよ」
 諸田は精神論を口にし、不安にさせる。
 気合いで乗り切れるほど、簡単な話か。成功させようとしたってできないことはいくらでもある。
 営業企画部次長という要職にある者に、半沢が期待するのは事態を見極める冷静な判断力だか、諸田にはそれが有るか。

 

「ちょっと待て、君たちは、買収路線を既定方針として考え過ぎてないか。東京スパイラルのことをどれだけ調べた? 徹底的に調べて、平山社長が考えている同社買収が戦略として正しいかどうかを見極めるのが先決だろ。場合によっては、東京スパイラルを買収しないという選択肢だってあるはずだ」

 

 

「ひでえな」

「子会社でしょう、ウチは。その子会社がせっかく掴んだ契約を、親会社がそんな強引なやり方でかっさらうなんて、おかしいじゃないですか。しかも、なんの仁義も切ってない」

 


「スジ論にうるさいからな、中野渡さんは」
なぜ、支援することになったのか、なぜ支援する必要があるのか、なぜウチでなければならないのかーー。与信リスクを背負う以前に、中野渡が気にするのはいつも足元を見据えた議論であった。それだけでなく、百戦錬磨の中野渡には独特の嗅覚がある。

 


ウチがここまで成長できたのは、最先端のウェブ技術があったからだ。成長のノウハウ?笑わせるな。そんなもん、あるとすればひとつしかない。他にない技術と競争力だ。だいたい、相手の技術力を見極める目がない奴に、投資なんかできやしないんだよ。

 

ちょっと会社がでかくなったからといって、お大尽気取りで投資事業かよ。そんなのはな、上場したもののカネの遣い道がない会社の道楽なんだよ。周りを見てみろ、投資事業できちんとした業績を上げてる会社がどこにある?図体がでかくなってカネがあると、ノウハウまであるんじゃないかと勘違いする、そん奴はバカだ

 

 

 死を選ぶ前の父は、深く懊悩し、ヒステリックになってちょっとしたことで瀬名や母に当たり散らしていた。


 電話が鳴るたび、ドアがノックされるたびに怯え、青ざめる父にとって、億に近い借金は、どうあがいても這い上がることのできないあり地獄であった。

 父の人生がなんであったのかという問いは、瀬名の中で次第に、カネとはなんなのか、という問いに置き換えられていった。
 カネなんかのために、なんで死ぬ?

 


「デメリット、ないしはリスクがあるんじゃないのか」
「検討して返事するよ」

世間的には紳士面をしてみせるが、銀行の実態はヤクザと大して変わらない

 


 どんな世代でも、会社という組織にあげらを掻いてる奴は敵だ、内向きの発想で人事にうつつを抜かし、往々にして本来の目的を見失う。そういう奴らが会社を腐らせる。

 

 おもしろいよな
千人もの社員に囲まれ、世の中ではそこそこに成功したといわれているが、実態は、信用できるパートナーがひとりもいない。創業メンバーには裏切られ、証券会社には騙される。一目置いて尊敬してきた相手は詐欺師ときた。いったい、どうなってんだ。

 

サラリーマンだけじゃなくて全ての働くひとは、自分を必要とされる場所にいて、そこで活躍するのが一番幸せなんだ。会社の大小なんか関係がない。知名度も。オレたちが追求すべきは看板じゃなく、中身だ。

 

 早い遅いの問題でしょうか。郷田社長
 あなたにとって、いやフォックスにとってどこが本当に相応しい相手かという視点で検討されたのでしょうか。電脳の傘下になって、うまくいくとお考えですか。


平山社長ほどの合理主義者はいらっしゃいませんよ。情で救済するような人じゃない。電脳にあるのはソロバン勘定だけだ。
あの人は恩義で動く人ではないですよ
強烈にビジネスライクな人です。もっといえば、行動基準は損か得かしかない。


あなたの立場は関係ないでしょう
保身を考える前に、顧客のことを考えていただけませんか。あなたがさっきから口にしているのは自分たちの都合ばかりじゃない。世の中客商売で、自分たちのつごうを言い訳にしてるのは銀行だけですよ


電脳の財務部長職なら待遇面で相当よかったでしょうに。よくお辞めになりましたね。

仕事の質は、人生そのものの質に直結しましから。

 


これは現代の侵略戦争だ
合法的で、しかも衆人監視の下で行われる侵略戦争なんだ。あるいは証券市場っていう現代のコロセウムでの拳闘試合みたいなものかも知れない。どちらかが殺されるまで続く真剣勝負のような。

お前には絶対負けてほしくない

 

 オレたちって、いつも虐げられてきた世代だろ。オレの周りには、いまだにフリーターやり続けてる友達だっているんだ。理不尽なことばかり押し付けられてきたけど、どこかでやり返したい、そう思ってきたんだ

 

 なるほどね。ただ、オレの考えはちょと違うな

 どんな時代にも勝ち組はいるし、いまの自分の環境を世の中のせいにしたところで、結局虚しいだけなんだよ。ただし、オレがいう勝ち組は、大企業のサラリーマンのことじゃない。自分の仕事にプライドを持ってる奴のことだけどさ。
どんな小さな会社でも、あるいは自営業みたいな仕事であっても、自分の仕事にプライドを持てるかどうかが、一番重要なことだと思うんだ。結局のところ、好きな仕事に誇りを持ってやっていられれば、オレは幸せだと思う。

自分はどうだろうか、と森山は自問した。

 


 証券営業部のこの稟議書は、買収成功ありきの予定調和で作成されており、与信所管部が本来おこなうべき基本的な判断業務を怠っています。結果的に電脳雑伎集団にかんする評価において、重大な見落としがあり、間違った結論を導き出している。

 企業分析などという、最も基本的なもので負けたんですよ、

 仲間を裏切りっておきながら、謝罪もなければ反省もない。それでいて、電脳の真相にせまることもできず、中途半端な仕事ぶりで迷惑をかける。君にとって、仕事ってなんだ。

 


世の中はいつもフェアなわけじゃない、と瀬名はいった。

嘆くのは簡単だ
世の中を儚み、文句をいったり腐してみたりするーーーー。でもそんなことは誰にだってできる


世の中に受け入れられるためには批判だけじゃだめだ。誰もが納得する答えが要る。
批判はもう十分だ。お前たちのビジョンを示してほしい。

 

簡単なことさ、正しことを正しいといえること。世の中の常識と組織の常識を一致させること。ただ、それだけのことだ。ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価される。そんな当たり前のことさえ、いまの組織はできていない。だからダメなんだ。

 

原因はなんだとお考えですか。

 

自分のために仕事をしているからだ。
仕事は客のためにするもんだ。ひいては世の中のためにする。その大原則を忘れたとき、人はじぶんのためだけに仕事をするようになる。自分のためだけにした仕事は内向きで、卑屈で、身勝手な都合で醜く歪んでいく。そういう連中が増えれば、当然組織も腐っていく、組織が腐れば、世の中も腐る。

結果的に就職氷河期を招いた馬鹿げたバブルは、自分たちのためだけに仕事をした連中が作り上げたものなんだよ。顧客不在のマネーゲームが、世の中を腐らせた。お前たちがまずやるべきことは、ひたすら原則に立ち返り、それを忘れないようにすることだと思う。

 


頭でっかちの集団だからな、証券本部は

きっと君たちは、机に問題と解答用紙が配られたら、誰にも負けないいい点数を取るんだろう。だが今回の試験は、まず解くべき問題を探してくるというところからはじまっていたようなものだ。君たちは、その肝心な勝負に負けた。その結果、君たちは、間違った問題を解き、間違った答えを出した。だが、東京セントラル証券はのほうは、たしかに通常の手続きとは違ったかも知れないが、正しい問題を把握し、導くべき結論を導き出した。

 

 もし半沢君がいなかったら、どうなっていただろうか。


 当行は電脳の粉飾に手を貸し、追加融資を合わせ2000億円も不適切な投資資金を支援するところだった。もし、あの資金を決済した後、粉飾の事実が明るみに出ていたら、頭取である私も、投資資金支援を主張していた君たちも、引責を免れなかっただろう。いま我々が、頭取だの副頭取だの、証券営業部部長などと偉そうな肩書きをぶら下げていられるのは誰のおかげか。そのあたりのことをもう少し考えたほうのがいいんじゃないか。

 

証券部門には優秀な人材がそろってるそうだ。もはや問題と解答用紙は配られた。

名誉挽回のチャンスじゃないか
君の優秀なところを見せてもらいたい。